研究概要 |
将来の電力システムにおいて,電力貯蔵設備の積極的な導入が必要不可欠になると予想される。超電導磁気エネルギー貯蔵(SMES)は,電気をそのまま貯められる特長から,高効率かつ応答速度が極めて速い理想的なエネルギー貯蔵装置として期待されている。本研究は,「高効率かつ制御性に優れた超電導コイル用電流型電力変換器システムの実験研究を行い,大規模SMES装置への適用の可能性を実証する。」ことを目的としている。超電導コイル用変換器として使用されるサイリスタ変換器は,遅れ位相により超電導コイルへの直流電力を制御する。本研究では,可変直列コンデンサーの機能を有する電流スイッチを用いて進み位相で直流電力を制御し,サイリスタ変換器の直列補償を行うことを試みるものである。平成21年度は,200V-100A級電力変換器システムの試作機を開発し,液体ヘリウム温度(4.2K)に冷却された自己インダクタンス1.8Hの超電導コイルに接続した概念の実証実験を実施した。その結果,電流スイッチの位相制御により,進み位相で超電導コイルへの直流電力が制御可能であることを確認し,超電導コイルの充放電制御が可能になることを実証した。また,直列補償がされていない遅れ位相のサイリスタ変換器と多重接続を行うことにより,超電導コイルへの直流電力制御と無効電力補償が可能になることを確認し,超電導コイル用電流型電力変換器システムとしての適正を実証することに成功した。本研究で得られた成果は,今後パワーエレクトロニクス技術や超電導技術に関する国際会議等で報告を行う予定である。
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