本研究は、電気接点自体に永久磁石を埋め込むことで、電磁リレーの機械的構造を変えることなく電気接点の消耗低減を実現する方法を提案し、その効果を実証することを目的としている。本年度はその第一段階として、電気接点等速開離装置を用いて、電気接点に永久磁石を埋め込み、開離時アーク(通電中の接点を引き離す時に発生するアーク放電)を発生させた。開離時アークの移動特性を高速度ビデオカメラで撮影し、永久磁石の効果を確認する実験を実施した。 純銀接点対を用いた実験で、電源電圧を直流42Vとして、回路電流5Aから21Aの範囲で、永久磁石による開離時アークの回転駆動効果が得られることを確認した。また、銀系焼結合金(Ag/ZnO及びAg/SnO_2)を接点材料用いて実験した結果、純銀接点の場合と同様に回転駆動効果が得られることが分かった。これらの永久磁石を用いた回転駆動による効果として、消耗領域が局所的ではなく広く均一になること、及びアーク継続時間が短縮されることが確認された。 永久磁石の磁界分布を測定し、高速度ビデオカメラで撮影した画像から開離時アークが存在する位置の時間変化を確認した。それらの結果から得られる、磁束密度と開離時アークの大きさ、及び同時に測定したアーク電流との関係から開離時アークに作用するローレンツ力を計算した。その結果、開離時アークを駆動するために必要最小限のローレンツ力があることが分かった。この値は、実際の電磁リレーで回転駆動効果を実証するための電気接点と、電気接点に埋め込むための永久磁石との形状と配置とを決めることに利用できる。この成果を基に、次年度以降では本課題で提案する構造の電気接点を搭載した電磁リレーによる消耗低減の実証実験を実施する。
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