本研究の目的は、電磁リレーに搭載された電気接点に永久磁石を埋め込むことで、その電磁リレーの機械的構造を変えることなく電気接点の消耗低減と均一化を実現する方法を提案し、その効果を実証することである。 はじめに昨年度までの成果を述べる。電源電圧直流42V、回路電流5A~21Aの回路条件において、接点開離装置を使用し、永久磁石による開離時アークの回転駆動効果が得られることを確認した。開離時アークの回転駆動により、接点消耗領域は同心円状の均一な状態となった。回転駆動の効果によりアーク継続時間が短縮された。これらの成果をもとに、永久磁石を実際の電磁リレーの電気接点部分に埋め込み、開離責務動作及び閉成責務動作による多数回動作実験(10万回)を実施した。その結果、42V-10A回路において、開離時アークに対しては回転駆動効果が得られ、閉成責務動作接点対では回転駆動効果が得られないことが分かった。接点開離装置での実験も継続し、開離時アークの回転運動を開始させるためには、ある値以上のローレンツ力が必要なだけではなく、アーク長さが回路条件で決まるある長さに達することが必要であることを明らかにした。 これらの結果をふまえて平成22年度には、永久磁石を埋め込んだ電気接点対を搭載した電磁リレーを用いて、より広い電流領域(7A-14A)で開離時アークの回転駆動効果が得られることを確認した。この条件下で、実験後の接点表面の消耗の痕跡は、局在化することなく接点面上に広く分布していた。また、接点開離装置を用いて、開離時アークの回転開始に必要な条件とその特性を詳細に調べ、回転開始時のアーク長さと回転周波数の特性が得られた。 以上の結果から、本研究で提案する方式により接点消耗の低減と均一化効果が得られた。また、開離時アークの回転駆動に必要な条件と回転特性が明確となった。
|