研究概要 |
1) 電磁鋼板の厚さ方向圧縮応力下での磁気特性計測システムの構築 幅8mm, 長さ240mmに切り出した単板の電磁鋼板の中心部(幅8mm, 長さ10mm)に厚さ方向に圧縮応力を印加したときの, その部分の透磁率, ヒステリシスループおよび鉄損を測定する自動測定システムを構築した。本測定システムは, アナログ/ディジタル変換器と任意波形発生装置とを一つのシステムでコントロールし, 試料内の磁束密度波形の高速な波形制御を可能としている。しかし, 1.5T以上の高磁束密度領域では, 波形制御に問題が有り, 改善が必要である。 2) 厚さ方向圧縮応力が印加されている範囲のみの磁界の強さを検出する特殊ロゴウスキーコイルの開発 測定装置は試料の厚さ方向に加圧する構造であるため, 試料の上下面に圧縮力を与える装置が密着しており, 一般的な単板磁気試験器のようにHコイルを試料表面に設置出来ない。本装置ではゴム板を巻き枠としたHコイルをC字形に曲げて, 圧縮力を印加する土台の試料表面近傍の両側面に両端を固定することで, 圧縮応力印加部のみの磁界の強さの測定が可能な特殊ロゴウスキーコイルを開発し, その有用性を明らかにした。 3) 厚さ方向に圧縮応力が印加されたときの電磁鋼板の磁気特性の測定結果 厚さ方向に圧縮応力が0.5-20MPa印加されたときの無方向性電磁鋼板35A300の透磁率および鉄損の測定を行った。その結果, 圧延方向に励磁した場合は, 厚さ方向の圧縮応力が増加すると磁束密度の大きさによらず, 透磁率は減少し, 鉄損は増加する結果が得られた。一方, 直角方向に励磁した場合は, 厚さ方向の圧縮応力が増加すると, 磁束密度の小さい領域では, 透磁率は増加し, わずかであるが, 鉄損は減少する結果が得られた。磁束密度が1T以上では, 応力の増加に伴い透磁率は減少するが, 鉄損はほとんど変化しない結果が得られた。
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