研究概要 |
本年度は, 容量結合型電力伝送システムの試作と実測実験を行った. 人体に埋め込まれる小型医療機器(例えばカプセル型内視鏡)への非接触電力伝送の実現が目的である. まず, 人体胴部を模擬するために, アクリル性の円柱型容器に, 食塩水(濃度0.18〜0.9%)を入れたものを試作し, これを模擬生体とした. 模擬生体の側面の対向する位置に, 銀箔電極を2個貼り付け, これを送電電極とした. 体内に埋め込まれた小型医療機器を模擬するため, 1.5×2cm程度の銀箔2枚を取り付けた小型容器を試作し, これを食塩水の入った円柱型容器の中央部に沈め, この電極の間を, 負荷抵抗3.3〜51Ωで接続した. 負荷抵抗は, 医療機器の電力消費を模擬するために入れたものである. 周波数1〜10MHzの電流を送電電極に印加した場合における伝送効率と受電電力を調べるために, 負荷抵抗に誘導される電圧を大地から絶縁されたオシロスコープを用いて測定した. さらに, 受電電極の位置を送電電極から離れた位置に動かしたり, 回転させたりしたときの効率も調べた. なお, 電流値は, 生体に流しても安全である値(ICNIRPのガイドライン値)とした. 実験の結果, 周波数9.5MHzにおいて, 100mW近い電力と, 30%を超える最大効率が得られた. また, 受電電極の位置による効率の変化は, 10%程度であり位置によらず安定した受電ができることを確かめることができた. 以上より, 提案する容量結合方式は, 十分な電力を人体に非接触で供給することができる極めて有用な方法であることを確認することができた.
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