本研究の目的は、超伝導コイルの安定性に関する一般的な設計指針である『超伝導線材の高安定化には、銅などの低電気抵抗材料を母材に使用すべき』という指針は、伝導冷却型パルスコイルでは必ずしも有効ではなく、むしろ、『伝導冷却型パルスコイル用超伝導線材には、CuNi等の高電気抵抗材料を母材に使用した、低損失線材を使用した方が有利である』という設計指針が成り立つかどうかを、実験と理論の両面から明らかにすることである。平成20年度はまず、CuNiを使用したNbTi多芯線を使用することによって得られる交流損失低減効果が、コイルの性能向上にどの程度効果があるかを調べた。瞬低SMES用に開発されたIMJコイルを例に挙げて評価を行った結果、コイル内の上昇温度を約1/10にまで低減できることを示し、コイルのコンパクト化に極めて有効であることを示した。また、伝導冷却された超伝導線材の安定性に及ぼす母材の電気抵抗率の影響を、理論面から明らかにするために、2次元の数値解析を行うた。その結果、CuNi母材の多芯線でも、Cuコアを配することによりコイル保護が可能なこと、最小クエンチエネルギーが向上し、十分な安定性を確保でき得ることを示した。さらに、これらの解析結果を確かめるための実験準備をスタートした。並行して、MgB_2線材についても伝熱特性の評価を行える解析コードの開発をスタートさせた。そのために、MgB_2線材の磁場中の特性評価まで行った。
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