本研究の目的は、伝導冷却型パルスコイル用超伝導線材には、CuNi等の高電気抵抗材料を母材に使用した、低損失線材を使用した方が有利であるという設計指針が成り立つかどうかを、明らかにすることである。平成21年度は、高電気抵抗であるCuNi母材のNbTi多芯線を使ったラザフォードケーブルを用いて、1MW/1秒補償の瞬低補償用伝導冷却型パルスコイルの設計を行った。また、通常のCu母材多芯線よりも性能の高いテープ状導体を活用した場合についても、同様の条件で設計を行った。CuNi母材線材を用いた場合は、Cu母材線材よりも交流損失が大幅に低減することにより、Cu母材線材を用いた場合よりも高磁界化が可能になることがわかった。その結果、クライオスタットを含めたコイル全体サイズを約25%低減できることを示した。さらに、臨界温度が高く20Kでの運転も可能なMgB_2線材を用いた伝導冷却型パルスコイルの実現性についても検討を行った。現状の臨界電流密度が低い線材でも、Cu母材のNbTi線材を用いた場合と同程度の性能が得られることを理論的に示した。また、絶縁有MgB_2テープ線2本を使った低損失並列導体を用いて3T級の磁界が発生できる小型コイルを作製し、そのコイルが安定に通電できることを実験的に示した。
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