研究概要 |
電力変換回路の高密度化薄型化を目的とした研究開発や小型・高効率化を実現するためにスイッチング技術に関する研究が盛んに行われている。しかしながら,高速動作による急峻な電圧・電流変化は伝導性のノイズや放射性のノイズを増大させることが知られている。10kV/usを超える高速のスイッチング回路では伝導性のノイズによる誤動作が起こる恐れがあり,高速動作とノイズ対策を両立したドライブ回路の研究も行われている。 現在,高密度パッケージング技術・3D配線などが提案されており,パワーエレクトロニクス回路への応用も期待される。主回路と制御回路を多層基板により構成し重ね合わせた構造を取ることで,ゲート配線の最短化による回路動作の高速化や高密度化を実現できる。このような構造の場合,伝導性のノイズによる影響だけでなく,主回路近傍に生じる近傍放射電磁界の影響により制御回路が誤動作する可能性がある。パワーエレクトロニクス回路は高電圧・大電流を扱うため高パルス電圧による電界と大電流による磁界の影響を検討する必要がある。特に薄型構造かつ高速スイッチングの場合,主回路と制御回路の近接により形成される静電容量(浮遊容量)を介した静電誘導ノイズが生じる。 本研究では電力変換回路近傍における電界と磁界のノイズ影響を実験により検証し,その抑制法を検証した。まず,放射電磁界を測定するための測定冶具の設計・製作を行いその有用性を明らかにした。さらに,300V,10Aの電力変換回路を設計・製作し回路近傍での放射電磁界を測定し,理論解析との検証を行った。その結果,等価回路モデルによるノイズ源の解析より,現在のディスクリート部品を用いたパワーエレクトロニクス回路における近傍の電界ノイズと回路小型化の設計限界について考察を行った。
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