研究概要 |
本研究では,磁気非線形性を考慮した埋込磁石同期モータのロバスト適応制御法について検討した。以下に今年度の成果を示す。 第一に位置センサレス制御時のインダクタンス変動に対するロバスト化を図った。電流増加時の磁気飽和現象にともなうインダクタンス変動が制御系に与える影響を数値例により考察し,その原因を明らかにした。さらに,この解析結果から電圧情報を用いない推定法を確立することが一対策として有効となることを示し,これにロバストとするための未知入力オブザーバを用いた位置センサレス制御系を提案した。実機実験によりインダクタンス変動に対するロバスト性を評価し,提案法は磁気飽和現象の影響をほとんど受けない位置センサレス制御を実現可能であることを実証した。 第二に,位置センサレス制御に用いる数学モデルの検討を行った。これまでの研究で導出した磁束モデルを再検討し,磁気飽和現象の影響を受けにくいd軸インダクタンスのみをモデルパラメータとする新たな埋込磁石同期モータの磁束モデルを導出した。この数学モデルは,磁気飽和現象にロバストとなるだけでなく,最大トルク/電流を実現する最適電流位相を近似なく求めることができる。したがって,より簡易なモデルで高効率な位置センサレス制御を実現することができる。
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