研究概要 |
本年度は,まずInPバルクの2光子吸収係数βの偏光依存性を測定した。具体的には,ポンプ・プローブ測定系を利用して,直線偏光である2光の偏光方向を独立に試料の結晶軸に対する角度を変えて照射することで,βを測定した。光源は波長可変フェムト秒レーザを使用し,波長域1640nm-1800nmにて測定を行った。その結果,βは2光の偏波方向が同一方向のときに極大となり,直交する時に極小となった。そして,2光の偏波方向が共に[110]方向のときβは最大となり,波長を1640nmから1800nmまで変化させると,βは25cm/GWから5cm/GWと波長に対して単調減少した。これらの結果から,より基本的な物理パラメータである非線形感受率テンソルX^<(3)>の独立な成分(X^<(3)>_<xxxx>, X^<(3)>_<xyyx>, X^<(3)>_<xxyy>)を各波長にて算出した。この得られたX^<(3)>値から,ポンプ光を円偏光に,プローブ光を直線偏光とした場合について,βのプローブ光の偏光方向依存性を計算によりシミュレートした。その結果,βの偏光方向に依らずβ=17cm/GW(波長1640nm)一定の結果となった。実際に実験を行ったところ,βのプローブ光の偏光方向依存性はほとんど無く,値も計算値とほとんど等しかった。これは,得られたX^<(3)>の値が正しいことを示しており,この結果の値を用いれば任意の偏光状態の2光子吸収特性をあらかじめシミュレートできることを意味している。次に,InPの光導波路(幅:5.8μm,高さ:13μm,長さ:270μm)を作製し,初年度に作製した顕微観測系にて2光子吸収測定を行った。その結果,光吸収量変化がInPバルクの結果よりも約1.4倍大きな値となり,導波路構造の優位性を検証できた。
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