研究概要 |
室温以上の高温領域においてスピングラス的挙動を示すスピネル型フェライト(AI, Ru, Fe)304薄膜(グラス転移温度〜330K)およびガーネット型フェライトLu3(AI, Ru, Fe)5O12薄膜(グラス転移温度〜340K)を作製した。これ薄膜に光照射を行うと、グラス磁性が融解し、磁化が約40%増大することを見出した(室温光磁性)。さらに、X線光電子分光および磁気光学効果スペクトル測定によって、この光磁性の起源が、Fe-Ruイオン間の光励起電子移動であることを突き止めた。組成、格子歪、イオン配置を最適化することにより、室温において更なる巨大光磁性および巨大磁気光学効果の発現が期待できる。また、新規マルチフェロイック材料としてガーネット型フェライトに着目し、薄膜において、基板との格子不整合による面内引張り歪効果を導入することにより、室温で双極子-スピン秩序が同時発現することを見出した。また、膜面直方向の歪の導入とスピン軌道相互作用の増大による巨大磁気光学効果の発現を狙い、RサイトをBi置換して電気磁気特性とその構造相関を詳細に調べた。試料作製では、下部電極層としてITO(膜厚10nm)をGd3Ga5O12(100)基板上に蒸着後、その上からPLD法によりY3-x-yLuyBixFe5O12(膜厚96nm)を堆積した。基板-薄膜間の格子歪はBiの濃度増加に伴い0.1-1.9%と増加し、YIG結晶格子が膜面直方向に伸張して反転対称性が破れ、自発分極が発現した。また、磁場印加により残留分極が約4%増加することを見出した。この電気磁気効果は、磁歪効果に基づくモデルでは説明できず(計算値では0.03%)、また格子歪やBi濃度に強く依存することから、基板-薄膜界面の歪効果によるスピン配列の変調による内部電界の発生が影響していると考えられる。これらの成果をもとに、自己整合・強磁性酸化物ナノワイヤと巨大光電気磁気物質の融合によるマルチフェロゲートスピンFETの開発を進めている。
|