研究概要 |
本研究は, 材料の電子物性を超えた発光現象の根本的な制御が期待される光ナノ構造を, 電子デバイスに最も広く用いられている半導体材料であるが, 間接遷移型ゆえ, 発光割合が極めて小さいという問題点があるシリコンへ導入した場合の発光状態を観察し, 理論と比較していくことで, 光ナノ構造がシリコンからの発光に与える効果を明らかにしていくことを目的としている. 本年度は, 最も基本的な光ナノ構造のひとつである, 円孔三角格子2次元フォトニック結晶スラブ構造と3個埋め点欠陥光ナノ共振器を主な対象とし, 研究を進めた. フォトニック結晶の格子定数を系統的に変化させてフォトルミネッセンス測定を行うことにより, 格子定数を媒質内波長に一致させたときには面内共振による発光の増強およびスラブ面垂直方向の回折作用が同時に起こり, 格子定数が波長よりも大きいときには多重回折効果でスラブ外に光が効果的に取り出され, シリコンのバンド間遷移にあたる波長1.1μm帯の発光が, 数10倍程度増大することが確認された. 一方, 光ナノ共振器をシリコンスラブに導入すると, 共振器内でのシリコンと光の相互作用の増大等により, 発光特性の大幅に向上が期待される. フォトルミネッセンス測定で観察された共振モードにおいて, 光ナノ構造のない参照領域と比べ, 数百倍程度の発光増大が観察された. この際, 各共振モードにおける共振器Q値, モード体積, 放射パターンと発光強度の振る舞いを詳細に調べた結果, 発光に競合する付加的損失に対して外部への結合が強く, 放射パターンが実験光学系へ効果的に結合できることが, 発光増大の主な起源となっていることが示された.
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