ZnTe系材料を用いた純緑色発光デバイスの高効率化を目的に、Zn_<1-x>Mg_xTe/ZnTe量子井戸構造を有するLEDを実現するために必要な基盤技術の開発を目指して研究を行った。本年度は、昨年度開発した技術の高度化を図るとともに発光デバイスの試作を進め、性能評価を行った。 1. MOVPE法によるZnTe基板上へのp-Zn_<1-x>Mg_xTeヘテロエピタキシャル成長において、平坦なエピタキシャル膜が得られる条件にて燐ドーピングを行い、電気特性、光学特性を評価した結果、Mg組成が少ない(x<0.1)領域において約10^<19>cm^<-3>の非常に高いキャリア濃度を有し、かつ、高品質ZnTeバルク結晶と同等あるいはそれ以上の発光強度を有するZnMgTe結晶を得ることができた。 2. MBE法によりMg組成、井戸幅を変化させながら各種Zn_<1-x>Mg_xTe/ZnTe量子井戸構造を成長し、そのフォトルミネッセンスピークの発光エネルギーと発光強度を評価した。その結果、Mg組成がある割合を越えると、格子不整合による欠陥生成のため、発光強度が非常に弱くなることが分かり、LEDに利用可能なMg組成範囲を決定することができた。 3. 拡散制御層を用いたAl熱拡散によるLED作製において、拡散制御層をナノレベルで制御するとともに、LEDの薄膜化による自己吸収効果の抑制技術を確立した。 4. 以上の技術を用いてLEDの試作を行い、発光特性を評価した結果、シンプルなZnTeホモ接合LEDにおいても市販GaP緑色LEDと同等の性能を有するLEDを得ることができた。ヘテロ構造を有するLEDでは、ZnTe LEDで見られた自己吸収効果は認められなかったものの、熱拡散によるヘテロ界面の乱れの影響を受け、高い効率を得ることができなかった。今後、さらなる検討が必要である。
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