研究概要 |
本年度の研究計画に基づき, 高品質ナノサイズ強誘電体の下地に用いる電極薄膜の高品質化とSPM測定技術の高感度化に取り組み, 以下の知見を得た. 1. スパッタ法によるSrRuO_3下部電極の作製において, スパッタ圧力を0.1-0.5Torrと高くすることで, 原子レベルで平坦かつ単結晶とほぼ同等の電気抵抗率(<300μ0-cm)を有する薄膜の作製を実現した. 従来のSrRuO_3に比べ積層欠陥が非常に少ないことを高分解能透過型電子顕微鏡(TEM)観察から確認した. また, この高品質SrRuO_3薄膜を上部電極として用いることで, 高品質なPbTiO_3極薄膜キャパシタの作製に成功した. 2. 傾斜角の異なるSrTiO_3(100)基板を利用することで, 通常, 網目状に形成されるPbTiO_3薄膜のaドメインをある特定の結晶方位に沿って線状かつ等間隔に形成させることに成功した. また, ドメイン構造を制御されたPbTiO_3薄膜では, 分極反転時間が短くなることを見出した. 3. ZnOナノロッドをテンプレートとして, 直径500nm以下, 長さ10μm以上のPbTiO_3ナノロッド及びナノチューブを形成することに成功した. さらにその電界誘起歪みを測定したところ, 100pm/Vを越える大きな歪みが誘起可能であることを明らかにした. 3. 非線形誘電率顕微鏡(SNDM)を強誘電体極薄膜の観察に用いた場合には, ゼロ電位の不一致に起因する発振回路の直流オフセットにより, ドメイン構造が書き換えられることを突き止め, 直流オフセットを任意に設定できるような測定系を作製した. 4. AFMを用いた分極反転電流の測定系を立ち上げ, 実際に探針直下の分極反転電流が検出可能なことを確認した. しかし, 分極量を定量的に求めるには至らず, 定量測定の実現に向けてさらなる応答速度の向上と浮遊容量の低減を現在進めている.
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