研究概要 |
本年度の研究計画に基づき,高品質ナノサイズ強誘電体の作製とSPMによる分極反転の観察を行い,以下の知見を得た. 1. 高品質srRuO_3/PbTiO_3/srRuO_3極薄膜キャパシタを作製し,強誘電体特性の評価を行った.分極反転電流およびD-Eヒステリシス測定からは膜厚20nm以下まで190μC/cm^2という大きな分極反転電荷を有することを明らかにした. 2. SPMを用いた分極反転電流の測定より,膜厚20nm以下のPbTiO_3極薄膜および幅数10nm,高さ数nmのPbTiO_3ナノアイランドの分極電荷量を算出した.PbTiO_3極薄膜では膜厚4nmの試料においても最大で200μC/cm^2という膜厚20nm以上のPbTiO_3薄膜と同程度の分極量を有する可能性を示した.一方,幅数10nm,高さ数nmのPbTiO_3ナノアイランドに関してもSPMを用いて分極反転電流を測定することに初めて成功し,同じく100μC/cm^2を越える分極量を有する可能性を明らかにした,ただし,SPM探針と試料の接触状態によって測定される分極壁が大きくばらつくため,同一試料において得られた最大の分極量を真の分極量に最も近いと見なした. 3. 強誘電体PZTナノワイヤ・ナノチューブにおいて観察された巨大な電界誘起歪みの起源について調べるために分極軸の方向を明らかにすると同時に,単純化したモデルを構築し,検討を行った。その結果,ナノワイヤ・ナノチューブの断面形状が楕円形に変形することにより,薄膜の数倍の大きな電界誘起歪みが発生しうることを明らかにした. 4. 傾斜角の異なるSrTiO_3基板上に作製したPbTiO_3薄膜の電気的特性を測定し,傾斜角によって分極反転核の密度もしくは分域の成長速度が変化し,結果的に分極反転速度が変化することを見出した。 5. PbTiO_3極薄膜のD-EヒステリシスとI-V特性の非対称性を詳しく調べ,両者の非対称性の起源が異なることを見出した.
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