研究概要 |
近年、次世代デバイス用の材料として半導体と磁性体の両方の特性を併せ持つ希薄磁性半導体が注目されている。本研究では、あたらしい希薄磁性半導体の探索として、第一原理による理論計算により室温で強磁性を示すと予測されているバナジウム添加ZnSeの作製と評価を行った。バナジウム添加ZnSeが強磁性を示すための条件として、ZnSe結晶中のバナジウムは亜鉛サイトに置換されていることが要求される。ZnSe結晶中の亜鉛サイトに4配位のバナジウムが取り込まれると、バナジウムの3d電子のエネルギー準位は^4T_1,^4T_2,^4A_2に分裂する。光吸収測定の結果から2.2μmに^4T_1から^4T_2への遷移に起因するピークが見られ、ZnSe中のバナジウムは閃亜鉛鉱型結晶構造を形作る4配位の状態で置換されていることが分かった。さらにバナジウムは両性元素であり、伝導帯の下端から下へ1.43eVの位置にドナー準位を、価電子帯の上端から上へ1.28eVの位置にアクセプタ準位を形成することが報告されている。光電流測定を用いてバナジウムが形成するエネルギー準位を調べた。その結果、光電流は880nmから急激に流れはじめ、860nm(1.44eV)で最大値を示した。このピークはバナジウムのドナー準位から伝導帯への励起エネルギーと一致する。しかしながら、光電流が正孔によるものか電子によるものかについては光電流測定の結果では判別できない。そこで、光照射しない場合と光照射した場合のホール効果測定を行い、光照射によって生成されたキャリア種の同定を行った。その結果、ホール電圧の極性より、光照射によって生成されたキャリアは電子であることが分かった。一方、光照射を行わなかった場合には絶縁性を示した。これら光吸収,光電流とホール効果測定からZnSe中のバナジウムは亜鉛サイトに置換されていることが示唆された。
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