研究概要 |
近年、次世代デバイス用の材料として半導体と磁性体の両方の特性を併せ持つ希薄磁性半導体が注目されている。本研究では、あたらしい希薄磁性半導体の探索として、第一原理による理論計算により室温で強磁性を示すと予測されているバナジウム添加ZnSeの作製と評価を行った。バナジウムの添加原料には有機金属原料であるビスエチルシクロペンタジニエルバナジウムを用いた。これまでに用いた原料であるトリエトキシバナジルは室温では液体状態にあるが構成元素に酸素を含むため、純粋なバナジウムだけでなく酸化バナジウムが混入する恐れのある原料であった。これに対してビスエチルシクロペンタジニエルバナジウムは室温で液体状態にあり、構成元素に酸素を含まない理想的なバナジウム添加原料と考えられる。しかしながら蒸気圧に関する詳細なデータはないため、原料バブラーの温度とそこに流し込むキャリアガスの流量を一定とした条件でバナジウム添加ZnSe膜の作製を行った。バナジウム添加ZnSeが強磁性を示すための条件として、ZnSe結晶中のバナジウムは亜鉛サイトに置換されていることが要求される。ZnSe結晶中の亜鉛サイトに4配位のバナジウムが取り込まれると、バナジウムの3d電子のエネルギー準位は^4T_1,^4T_2,^4A_2に分裂する。光吸収測定の結果から2.2μmに^4T_1から^4T_2への遷移に起因するピークが見られ、ZnSe中のバナジウムは閃亜鉛鉱型結晶構造を形作る4配位の状態で置換されていることが示唆された。
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