研究概要 |
ミリ波を用いた屋内無線通信技術は, 未利用周波数帯有効利用および大容量・高速通信実現の観点から今後のIT産業に革命的な発展をもたらし得る高い将来性を持つが, 成功の鍵は送受信系装置の低コスト化と, 什器や人体が存在する複雑な伝播環境下での安定したサービスエリア実現にある. 申請者は環境適合性の高いシリコーン材料を母材とし, 内部に金属チップとカーボン材料を混合し成型することで電波を効率よく反射させる散乱体ができる可能性を見出している. さらに, 大規模数値解析に基づき, 複雑かつ多様な設定条件(人体の数等)下での電磁界をシミュレーションにより明らかにし, 複雑な伝搬環境下におけるエリア評価を実現している. 本年度は, 屋内ミリ波通信の装置構成についての基礎検討として, アンテナ構成, 評価する実環境モデル(人体や什器を含む屋内空間)について数値シミュレーションのためのモデル作成を行った. さらに,新素材散乱体の電気特性および形状に関する理論検討として, 散乱体の構成材料および形状と散乱特性について理論的な検討を行った. 新材料の特性に基づき, 10〜20GHz帯で動作する散乱体の設計・試作を実施し, 数値解析モデルへの組み込みを行った. これら成果に基づき, 3次元電磁界解析を行い散乱体による通信エリア率の上昇効果について定量的評価を実施した. 高速ミリ波帯通信普及のため, 実環境での特性評価と通信品質劣化の回避は最重要課題であり, 本研究はこれらの問題を解決する新技術の確立に資するものである.
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