研究概要 |
ミリ波を用いた屋内無線通信技術は,未利用周波数帯有効利用および大容量・高速通信実現の観点から今後のIT産業に革命的な発展をもたらし得る高い将来性を持つが,成功の鍵は送受信系装置の低コスト化と,什器や人体が存在する複雑な伝播環境下での安定したサービスエリア実現にある. これまでに,申請者は環境適合性の高いシリコーン材料と金属チップとカーボン材料を混合し成型することで電波を効率よく反射させる新材料散乱体を提案し,さらに,大規模数値解析に基づき,複雑かつ多様な設定条件(人体の数等)下での複雑な電波伝搬環境におけるエリア評価技術を検討している. 本年度は,前年度実施した散乱体の形状および散乱特性についての理論検討に基づき電波散乱体を試作した.さらに,スケールモデルを適用した5GHz帯の伝播特性の測定系を構築し,複数種類の電波散乱体を用いた実験を実施した.また,伝播特性に対して影響が大きい什器および人体の存在する実環境での測定実験を実施した.屋内における什器の占有率や配置,および人体の数を変化させ,マイクロ波・ミリ波帯の伝搬特性について高信頼・高精度な実験データを収集した.これら測定結果により妥当性を確認した大規模電磁界シミュレーション技術を用いて,散乱体とアンテナを含む構成条件について最適化を行い,高信頼な屋内高速ミリ波通信の実現可能性を明らかにした. 大規模数値解析を用いたミリ波伝播特性の評価技術,および低コストで実現可能な散乱体による受信感度向上技術についての本研究成果は,屋内無線通信のみならず,例えば,医療器への電磁干渉の緩和を実現するミリ波RFIDシステムの開発等への発展も期待できる.
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