今日の情報化社会において、その情報機器の基盤である半導体デバイスのさらなる技術発展が望まれているが、デバイスの微細化・集積化が進み、ドーパント分布に由来する素子特性ばらつきや、SiO2ゲート絶縁膜厚を1nm以下まで薄くすることで生じるゲートリーク電流の増加等で、集積化を足止めするに至っている。そのため、ドーパント分布やSiO2ゲート絶縁膜に代わるHigh-kゲート絶縁膜を調べることは重要である。3次元アトムプローブ法は、実空間中で原子の3次元位置と種類をほぼ原子レベルの分解能で再現する測定法であり、近年のレーザーパルス方式によって半導体材料の測定が可能になったので、レーザーパルス型局所電極型3次元アトムプローブを用いて、ドーパント分布やHigh-kゲート絶縁膜構造について測定を行い、実デバイス構造やHigh-kゲート絶縁膜構造のアトムマップを得ることに成功した。ドーパント分布においては、n-MOSFETにおけるチャネル中のB原子に関してソースドレインエクステンションのエッジ付近で濃度が少し高い領域が存在することや、多結晶Siゲート電極のP原子が粒界やゲート酸化膜界面に偏析していることを見出した。一方、p-MOSFETにおいては、多結晶Siゲート電極中のB原子は粒界・界面偏析せずゲート酸化膜内へ侵入することを明らかにした。High-kゲート絶縁膜構造についてはハフニウム酸化膜の傾斜構造らしきものが観測されたが今後詳しく調べていく必要がある。
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