酸化タンタル(Ta)は、波長多重通信用多層膜フィルタ等にも応用されている高屈折率材料であるが、我々は、これまでに、高周波スパッタ法により酸化Ta薄膜を成膜し、アニール処理後に波長400~430nm付近をピークとする青色発光が得られることを見出し、酸化Ta薄膜が、発光デバイス等のアクティブ素子へも応用できる可能性を示している。そこで今回は、まず、酸化Ta薄膜の作製条件を探索的に変化させ、発光特性に与える影響について調べた。更に、エルビウム(Er)をドープすることにより、酸化Ta薄膜の発光特性の制御や発光ピークの拡張を狙った。 Ta_2O_5ターゲットをAr雰囲気中でスパッタし、酸化Ta薄膜の形成を行った。アニール処理後、励起光源としてHe-Cdレーザ(波長325nm)を使用してフォトルミネッセンス特性を測定したところ、波長500~600nm帯にピークを持つ可視発光を確認した。この発光強度を向上すべく、スパッタ条件、アニール条件を探索的に変化させた試料を作製・評価したところ、RF電力200W、Arガス導入量5sccm、アニール温度700℃、アニール時間30分とした試料において、最も強い発光を得ることができた。 次に、Ta_2O_5ターゲット上にEr_2O_3タブレットを載せ、それらを同時スパッタすることで、Erをドープした酸化Ta薄膜を成膜した。アニール処理を行うことにより、波長550nm、670nmにシャープな発光ピークを観測できた。スパッタ条件、アニール条件、Er添加量を探索的に変化させた試料を作製・評価したところ、Er_2O_3タブレット3枚を使用し、900℃で20分間のアニールを行った試料が、波長550nm、670nmの発光ピーク強度が共に最大となることが分かった。これらの発光ピークは、Er^<3+>のエネルギー準位に由来するものと考えているが、現在詳しく調査中である。
|