研究概要 |
MRI(Magnetic Resonance Imaging:磁気共鳴画像法)装置は,強い静磁界中に置かれた被検体(主に人体)にパルス状電磁波を照射することによって生じるNMR(Nuclear Magnetic Resonance:核磁気共鳴)信号を受信し,被検体の内部構造を画像化する装置である。近年,妊娠女性がMRI装置を利用した際のパルス状電磁波による電磁波エネルギー吸収量評価が求められている。そこで本研究では,高精細妊娠女性数値モデルを用いて,MR画像撮像時の妊娠女性腹部(すなわち胎児)における電磁波エネルギー吸収量を計算機シミュレーションと実験的手法の両面より明確にすることを目的とした。昨年度は,生体内における電磁波エネルギー吸収量の評価指標であるSAR(Specific Absorption Rate[W/kg]:比吸収率)分布を算出し,特に胎児付近にて詳細に観察し考察した。そこで,本年度は,このSARを発熱源として,体内における温度上昇分布を算出した。これを行うにあたり,生体組織の熱的な物性定数を明確にするとともに,体表面での冷却効果や発汗作用などもモデル化し,計算機シミュレーションを行った。この結果,通常のMR画像撮像時の胎児付近の温度上昇値は,きわめて低く,奇形や発育障害といった問題が生じるレベルではないことが明らかになった。さらに本年度は,被検体での電磁波エネルギー吸収量を低く抑えるためのRF(Radio Frequency)コイルを開発するための基礎検討を行い,いくつかの有用な知見を得た。
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