本研究では、将来の無線通信システムにおける周波数資源の枯渇や送信電力増大に伴う、環境電磁波問題を軽減するため、独自方式の全光波長変換技術を応用した光ファイバ無線のための光制御型広帯域フェーズド・アレーアンテナの実現を目的としている。 今年度は、本研究テーマの基準盤技術となる光ファイバ無線システムや全光信号処理技術に関する基礎研究に焦点を当て、研究を実施した。 光ファイバ無線システムでは、アンテナ基地局にヘテロダイン技術を用いた実験系を組み上げ、無線LAN規格に準拠した無線信号を用いた光ファイバ無線伝送システムによる伝送特性評価を実施した。これにより、高い伝送品質を実現することに成功し、光ファイバ無線システムの性能評価を行うための実験環境を立ち上げに成功した。 全光信号処理技術では、光波長変換動作の広帯域化に関する検討を実施し、光スイッチング素子として利用した半導体光増幅器の利得波長特性に着目することで、単一の光波長変換素子において、動作波長範囲150nmでの波長変換動作実証実験に成功した。また、光波長変換素子内の半導体光増幅器で発生する周波数チャープによって出力信号が光ファイバ中で伝搬する際に受ける影響を調査するため、汎用性の高い光フィルタのみで、高精度な周波数チャープを測定できる手法を新たに提案し、半導体光増幅器で生じる様々な周波数チャープ特性を高精度に測定することに成功した。 これらの研究成果で得られた知見や技術をもとに、本研究の主題である光制御型フェーズド・アレーアンテナの実験系も既に完成段階に入っている。最終年度である2009年度では、これらの詳細な特性評価を実施し、実用的な無線通信に適用可能なフェーズド・アレーアンテナの実証実験を目指す。
|