無線通信システムの大容量化を実現する上で、光ファイバ無線を活用した光ネットワークの実現が望まれる。また、無線アンテナ基地局においては、無線周波数資源の枯渇や、アンテナ送信電力増大に伴う環境電磁波問題を軽減するため、無線通信システムにおけるフェーズド・アレーアンテナの導入が期待されている。本研究では、光ファイバ無線をベースとした光ネットワークと親和性の高い光制御型フェーズドアレーアンテナシステムの実現を目指す。 本研究のキー技術となるのが、光アナログ信号の多波長変換を行う全光マルチキャスティング技術である。これまで、光デジタル信号でのマルチキャスティングは報告されているが、本研究では、独自技術を発展し、光アナログ信号による広帯域マルチキャスティングの実証実験に初めて成功した。これにより、光ファイバ無線ネットワークを伝搬する光信号からマルチキャストされた多波長光信号を用いた実時間遅延方式の光制御型フェーズド・アレーアンテナを構成した。 実証実験では、無線通信として汎用されているIEEE 802.11の無線LAN規格に準拠した64 QAM OFDM信号で変調された光アナログ信号を利用した4チャネル全光マルチキャスティングでの符号誤り率評価を行い、元信号に対し、無エラー動作時で2 dB以下のパワー・ペナルティを得られることを明らかにした。実際のアレーアンテナ構成では、4アレー型のアンテナで、数GHz帯の無線信号においても、実用レベルの指向性を有する広帯域フェーズド・アレーアンテナを実現することが可能であることを明らかにした。 本研究で提案・実証したアレーアンテナシステムは、広帯域性にも優れ、光ファイバ無線システムとの整合性にも優れていることから、将来の超高速無線アクセスシステムにも有効な技術であると考える。
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