(1) SOI構造での電子・変調音響フォノン相互作用計算プログラム改善 SOI構造での変調音響フォノン状態・形状因子・散乱レート・電子移動度を数値計算するプログラムを改良し、無限量子井戸に閉じ込められた電子だけでなくより一般的な電子波動関数を取り扱えるよう拡張した。また、プログラムを全面的に見直して利便性を向上させた。 (2) 電子・変調音響フォノン相互作用の根底にある物理機構の解明 自立シリコン板での形状因子増大を、面内フォノン波数がゼロのところに限って解析式によって詳細かつ厳密に調査した。具体的には、変調音響フォノン分散ブランチの面内フォノン波数ゼロ近くでの漸近式を数学的摂動法によって計算し、長波長フォノンの挙動を高精度で表す解析式を示した。また、任意の面内フォノン波数及びブランチで成立するフォノン振幅の解析式を導出した。これらを組み合わせて極限計算を行い、面内フォノン波数ゼロ近傍での形状因子を厳密な理論式によって表した。それにより、少なくとも面内フォノン波数がゼロとなるところでは形状因子に総和則が成り立つことが新たに明らかになった。この理論構築の過程で、電子と変調音響フォノン相互作用を特徴付ける物理量を明らかにし、それが形状因子の普遍性と深く関わっていることを確認した。
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