変調音響フォノンと電子の相互作用の強度を特徴付ける上で中心的な役割を果たす形状因子の挙動を、様々なフォノンブランチごとに分けて個別に解析を行った。特に板状構造での面内フォノン波数がゼロとなるところでの形状因子増加について詳細かつ一般的な解析を行った。それにより、面内フォノン波数ゼロの状態での形状因子増加は最低エネルギーのフォノンブランチによるものであること、それは板状構造が自立構造のときのみならず別の物質の中に埋め込まれたり薄膜でコーティングされたときにも一般的に成り立つ事などを明らかにした。また、その形状因子増分を表す一般的な数式表現を導出し、総和則が成立することを数学的に証明した。このような形状因子増加の物理的原因は異なる材料が接触する界面におけるモードによるものであると考えられる。解析では主にシリコンと酸化シリコンの組み合わせにより計算された数値データを用いて行われたが、それにより得られた法則や定理は材料定数を変えるだけであらゆる材料の半導体に適用可能である。このような解析をワイヤ構造でも行うことにより、ワイヤ構造においても定性的に板状構造と同様の現象が見られることを明らかにした。以上のような物理的一般法則の解明だけでなく、工学的に重要なSilicon-On-Insulator構造やNanowire構造のMetal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistorでの電子移動度計算に変調音響フォノンの影響を取り入れた。また、そのようにして得られた電子移動度を簡易的な数式によって表すモデルを開発し高い精度を達成した。以上の知見により、任意の半導体材料により構成された自立・埋め込み構造の板・ワイヤにおける変調音響フォノンと電子の相互作用を一般的に議論する知識基盤が整備された。
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