本研究では、集光点において極微小な光場を形成すると期待される径偏光ドーナッツビームをフォトニック結晶レーザにより生成し、その集光点での光強度分布の検証と応用技術への展開を目的とする。中心軸(光軸)に対し対称な放射状の偏光をもつ径偏光ドーナッツビームを、高開口数のレンズで集光した場合、ビーム径方向の電界成分は打ち消し合い、光軸方向へ振動する電界成分のみが残り、これが極微小な光場の形成につながるものと予測される。平成20年度は、集光点の大きさを評価するため、集光点での電界分布を、ナイフエッジ法を用いて測定する光学系の構築を行った。高開口数の対物レンズで強く集光された光を全て捉えるため、フォトダイオードの受光層から数百nmの距離に、金属のナイフエッジを形成したディテクタを作製した。これを、ナノメートル精度のステージで走査し、光電流強度を測定することで、集光点での光強度分布が測定可能となる。構築した系を用いて、径偏光ドーナッツビームの集光点での光強度分布を測定したところ、理論的予測と一致する単峰の分布を得ることに成功した。これは、光軸方向へ振動する電界成分が、確かに光軸上に強度を有することを示した結果でもある。さらに、集光点についての理論解析も進めたところ、ビーム外側に強度を集中したビームでは、光軸上の成分が主成分となり、より微小な集光点が得られることが明らかとなった。特に強度を、ビームの半径の外側50%に集中することで、ガウスビームより小さくなることが予測される。実験によってもビーム外側に強度を集中させることが、微小集光点を形成するのに有効であることが確認できた。今後は、得られた集光点での物質との相互作用を検討していく。
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