本研究では、集光点において極微小な光場を形成すると期待される径偏光ビームを含め、ベクトルビームをフォトニック結晶レーザにより生成し、その集光点での光強度分布の検証と応用技術への展開を目的とする。光軸に対し対称で放射状の偏光分布を示す径偏光ビームを、高開口数のレンズで集光した場合、光軸方向へ振動する電界成分のみが中心に残り、これが極微小な光場の形成につながるものと予測される。平成21年度は、光軸方向へ振動する電界強度をより増加させるため、ビーム外側に強度を集中させて、集光点の光強度分布を評価した。その結果、集光点の幅は半波長以下となるのに加え、焦点深度が5波長~10波長程度に伸長することを見出した。この成果は、深さ方向の調整が容易で、高分解能な測定を可能にする光源が実現できたことを示している。さらに、集光点と物質との相互作用を検討するため、FDTD法による数値解析を開始した。径偏光ビームの集光点の中心に、一辺が半波長程度の金属立方体を設置し、光場の様子を検討した。その結果、電界強度分布の最も大きな光軸上に金属を設置したのにもかかわらず、90%以上の光が、伝搬していくことが明らかとなった。さらに、金属立方体の光軸上表面には、電界の増強効果(最大6倍)が観測され、径偏光ビームの特長が確認された。これらに加え、ベクトルビームの体系的な理解も深めた。径偏光ビームの他にも興味深い性質を見せるビームが存在することが期待される。まず、数学的に理解が進められるよう表現式を導き、ビームモードの系統的な理解を進めた。理論的に予測されたビームについては、一部実験的にも実現することに成功し、ベクトルビーム分野の発展に大きな一歩を踏み出すことが出来た。
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