研究概要 |
論理回路は,インバータやNORなどの論理ゲートによって構成されている.それら論理ゲートに放射線が当たると,ノイズパルスが発生してしまい,それによって回路がソフトエラーという誤動作を起こす.このノイズパルスはSET(Single Event Transient)と呼ばれている.その波形情報は,物理メカニズムの考察,最適対策法の確立に欠かせない.論理回路のSET波形を評価する既存の方法は,ある閾値で切った時の時間幅しか評価できず,全波形は実験的に解明されていなかった.この研究課題では,本年度,全波形観測に成功した.モニタリングトランジスタ法という観測手法を考案し,0.2ミクロンルール完全空乏型SOIプロセスで作成したインバータ論理ゲートに適用した.そのインバータ論理ゲートに短パルスレーザ放射線を照射し,発生するSETパルス波形を観測した.観測結果は,参照テーブルを用いた高精度波形推定法で求めた波形と一致した.これにより,観測波形の妥当性を証明した.そして,この観測法を用いて,短パルスレーザ放射線の強度が上がるにつれて,パルスが成長していく様子等を明らかにした. 更に,観測波形を物理的に理解するために,波形を決定している物理メカニズムの解明に着手した.SOIプロセスで作成された論理ゲートで発生するSETパルスは,飽和状態にあるバイポーラトランジスタのターンオフ動作で説明できると推論し,SETパルス幅を表わす解析式を導いた.その解析式を,デバイスシミュレーションの結果,そして,上記実測結果と比較した.その結果,解析式が,それらの結果を定性的に説明できることを明らかにした.
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