研究概要 |
【成果の内容】最終年度である本年度は,昨年度の成果であるSETの時間幅を説明する式を,波形を表わす式に発展させ,その妥当性をデバイスシミュレーション並びに実験で確認した.そして,一連の成果をまとめた.なお,本年度も昨年と同様にSOIデバイスを想定した.まず,デバイス内部で起きている物理現象をデバイスシミュレーションにより調査した.その結果,二つの時定数が明らかになり,それらを利用して波形を記述する解析式を導出した.その式は放射線の線エネルギー付与(LET)の対数関数と,負荷容量並びに負荷電流を係数に持つ指数関数の和となった.また,この式を元にして,昨年度までは比例式であった時間幅の式を等式に発展させた.次に,得られた式の妥当性をデバイスシミュレーションにより確認した.更に,実験でも妥当性を定性的ではあるが確認した.なお,実験には,昨年度の回路を改良して回路パラメータの依存性を評価できるようにしたものを用いた.実験は米国海軍研究所で実施し,重イオン放射線を模擬した短パルスレーザを用いた.当初検討していた重イオン放射線による実験は都合がつかず見送った.単体ダイオードのレベルでは短パルスレーザは重イオン放射線の代わりになることが確認されており,本研究の成果は重イオン放射線にも適用できると考えている.より一層の確認のために重イオン放射線による波形観測が今後の課題として挙げられる. 【本年度の成果の意義】SETパルスが放射線のエネルギーや回路パラメータにどう依存してどのような波形になるかを解明した.放射線試験の結果を補間したり,回路パラメータの変更が放射線耐性にどう影響するか議論したりすることが可能となった.放射線耐性の高い回路,すなわち,信頼性の高い回路の実現に貢献するものである.また,本年度の成果は応用物理学会講演奨励賞に選ばれており,この事からもその意義が認められる.
|