研究概要 |
生体などから得た低周波の信号を, 携行可能なシステムで処理し, 無線送信するための集積回路設計を目的とし, 電源電圧1 V未満で動作するように設計している. まず, 雑音除去と帯域制限のためのフィルタを検討した. 既に研究代表者らが提案した低電圧・低電力用フィルタが, 基底信号処理に好適であることに着目している. 低周波信号処理に必要な大きな容量値を, ミラー効果の双対原理に基づいて等価的に実現しており, 多少の損失が生ずるものの0.6V動作の回路が実現できるとの見通しを得た. 次に, フィルタの後段となるアナログ・ディジタル変換回路(ADC)を設計した. 低周波信号であるため, 逐次比較型や信号分割型を採用している. さらに1サンプルの変換処理に比べ標本化周期が長いことから, 変換後に緩衝器や比較器の電源を切ることで電力の削減が図れる. 0.4Vp-pの信号に対して8ビットを出力するとき, 30%程度まで低電力化できた. さらに, ADC出力のディジタル信号を処理する回路が, アナログ回路と同一の集積回路基板上に実現されることを見通し, 予想される問題であるディジタル基板雑音の低減にも取り組んだ。複数の雑音源についての低減効果の感度に注目し, さらに適切な近似を導入して理論解析を可能とすることで, 非常に有効に雑音低減ができる回路構造を導くことができた. 上述をまとめると, 目的のシステムを0.8V程度で実現できることがわかった. 今後はこれらを統合して具体的な設計をし, 実証する必要がある.
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