「情報爆発時代」と呼ばれるように、インターネットを介して膨大な情報が送受信される中、暗号技術(データの暗号化)を代表とする情報セキュリティ技術は必要不可欠であり、日本国における「安全・安心」を支える上での柱となっている。とりわけ電子認証技術は中核をなし、近年IDベース暗号と呼ばれる革新的な暗号応用技術が発明された。しかしながら、この技術はペアリングと呼ばれる計算処理が多く必要となる写像を用いており、そのため処理が重く実用化には時間が掛かるという問題があった。ここに当研究室では、交差ツイストAteペアリング(以下、Xt-Ateペアリング)と呼ぶ高速に計算処理が行える手法を提案した。この手法は非常に高速である一方で、対応する楕円曲線がBarreto-Naehrig曲線と呼ぶ一部の楕円曲線のクラスにしか用いることができないものであった。そこで本研究開発では、Xt-Ateペアリングを、より広いクラスの楕円曲線に用いることができるよう拡張した(平成20年度)。そしてこれを効率よく実現するアルゴリズムを開発し、ペアリング暗号に用いることができる一連のプログラムライブラリとして整備した(平成21年度)。そして本年度、具体的なペアリング暗号応用技術における本成果の性能を見極めるため、IDベース暗号に関して実現を試みた。多大な時間を要したものの、最終的に完成したプログラムをPC、携帯端末、スマートフォン、iPadなどで実装・実験し、例えばiPadにおいては、1回の署名検証処理を100ミリ秒を切る時間で、現実的な処理時間として実現できることを示すことができた。
|