研究概要 |
近年、ダイレクトコンバージョン受信機(DCR)は、低コストの通信端末機製造において非常に注目を受けている。しかしながら、DCRではRF帯信号から直接ベースバンド信号に変換することにより、直流オフセット(DCO)およびI/Q不均衡問題が新たに発生する。本研究は、低コストDCR方式OFDMとMIMO集OFDM受信機実現に大きな障害となっていたCFOとI/Q不均衡問題を研究対象とし、実用化可能なデジタル信号処理の補正手法を開発する。平成20年度には、OFDMシステムにおけるCFOとI/Q不均衡に対処できる最適なパイロット信号およびこのパイロットに基づいた補正法を提案しました。また、現存のOFDM通信システム規格でのパイロット信号に対処し得る補正法も提案しました。 従来法は、CFO推定は非線形最小2乗問題であり、解析解は存在しないため、計算は非常に複雑である。また、I/Q不均衡の補正係数はCFO推定値に依存し、正確な推定を得るため、タイミング同期は不可欠である。これらの問題点の主原因は、CFO推定とI/Q不均衡補正を別問題として解決している。 本研究では、両者を同一問題として捉え、CFOとI/Q不均衡補正係数を同時に推定できるアルゴリズムを提案しました。提案手法は,パイロットの周期性を利用し、線形最小2乗アルゴリズムを解くことにより、CFOおよびI/Q不均衡補正係数をすべて解析的に求めるものであり、計算負荷が大幅に軽減できる特徴を有する。また、パイロットは周期性を持っており、タイミング同期ずれがあっても周期性の変わりがないため、提案方法はタイミング同期誤差に対して頑丈であることも確認できました。さらに、周期性パイロットとチャネル推定パイロットを併用することで、802.11aWLAN標準に対応した補正法の開発も成功しました。
|