研究概要 |
平成22年度では,シグマデルタセルラーニューラルネットワーク(SD-CNN)のセルが呈する複雑な時空間ダイナミクス解析の基礎的研究として,空間的結合係数の結合範囲及び強度を変化させた際の各セルの時空間ダイナミクスをコンピュータシミュレーションにより調査を行った. SD-CNNは生体の網膜系を模したネットワークの複雑な時空間ダイナミクスによりシグマデルタ変調の重要な特性を実現し,画像などの2次元信号を直接2次元ディジタルパルス列に変調可能である.SD-CNNでは,CNNの状態をセルが周期解を持つ状態で安定化させるために,安定平衡解に収束するための条件を満たさないがエネルギー関数は単調減少するようなパラメータ設定をし,各セルがパルス密度変調を行うようにしている.また,各セルの入力値は正負の値を持つように線形変換されるため,セルは抑制性(負の入力)または興奮性(正の入力)の素子として振る舞う.これらのセルが空間的に結合することにより,そのダイナミクスは協調・競合的要素を持つ.シミュレーションにより,シグマデルタ変調では,入力値によりスパイク頻度が決定するが,SD-CNNにおいては協調・競合作用によりセルのスパイク頻度は空間結合係数であるAテンプレートの結合範囲及び結合強度並びに入力の空間的構造に依存するという知見が得られた. さらに,SD-CNNのDA部では画像予測が行われている.この性能向上の鍵となるCNNのパラメータを適切に設定する手法を検討するために,画像符号化を対象に検討を行い,入力の局所構造に適応したテンプレートを使用することの有効性を確認し,さらに,CNNパラメータの教師付き学習が可能であることを示した.
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