研究概要 |
本研究課題は,MIMO・コグニティブ無線システムにおいて,既存システムであるプライマリシステム(PS)が複数アンテナを用いた並列伝送中に,他システムであるセカンダリシステム(SS)が空間共有試みる際,共有可能な並列数を特定する,並列送信識別法の実機を用いた実験的検証を進めている.本年度は2つの成果が得られたので報告する. (1)PSの模擬信号生成機構の構築および実空間伝搬の同時検出機構の構築 昨年度導入した任意信号発生器を用いて,PSの並列信号を生成する機構を構築した.本機構では計算機上で生成した信号を電圧信号として出力でき,オシロスコープにより出力結果を確認した.関連して,構築した信号を電力増幅器に入力し,ピーク電力の変化に対する電力増幅器の電力効率評価を実施した. さらに,リアルタイムスペクトルアナライザを用いた空間検出手法を構築した.これにより,既運用中無線機の電波を検出することが可能になった.さらに,検出器の台数を複数に拡大し,複数地点での同時検出機構を構築した.本機構において,一方を被験対象に近接し,もう一方を所望検出位置に配置する.そして,各検出結果の差分から伝搬環境の様子を検出できる.この機構を活用して,MIMO無線機であるIEEE802.11n規格の無線機の信号を検出することで,実運用環現でのMIMO並列数の検証に発展できる. (2)PSとSSの共存規範の導出 PSとSSが周波数共存し,周波数資源の高効率運用を目指すことが本研究の前提となっている.そのため,PSとSSがどのような条件で共存した時に,周波数資源の高い利用効率が達成できるかを明らかにする必要がある.計算機シミュレーションにより実証を進めた結果,高い周波数利用効率を達成する切り替え条件があることが明らかになった.この条件を規範値とし,さらに,現在検証中の並列送信数識別法と併用することで,高い周波数利用効率を達成する無線システムが構築できる可能性が明らかになった.
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