研究概要 |
平成21年度はマルチメディアのデジタル指紋システムに対して有用な攻撃である『平均化攻撃』を仮定したもとで,符号長に対して多項式時間で不正者の検出が可能な符号構成法を開発した.平成20年度の研究で開発した符号構成法を用いることにより,符号化の効率性(符号長に対する符号語数の割合)は大幅に改善できるが,不正者の検出アルゴリズムの計算量も符号語数の増加に従って(符号長に対して準指数関数のオーダで)増大する.そこで,先に提案した符号構成法を修正し,不正者の検出アルゴリズムを併せて開発することにより,符号長に対して多項式時間で実行できる高効率なデジタル指紋の符号化システムを実現した.構成される符号は不正者の数がある閾値以下のときに不正者の検出を保障できる. 提案手法では,強力な誤り訂正符号であるReed-Solomon符号のリスト復号法をベースに不正者検出アルゴリズムを開発している.このように,本研究におけるデジタル指紋符号の開発には,符号理論が重要な役割を果たすため,誤り訂正符号の効率化,及び高性能な復号アルゴリズムの開発も行った. また,不正者に攻撃されたコンテンツから不正者を推定する過程はマルチユーザ通信(特に,多重アクセス通信路)における符号化システムと類推することができる.そこで,デジタル指紋符号への応用を見据え,マルチユーザ通信における符号化に関する研究も併せて行った.特に,符号器協調を許容する多重アクセス通信路における高性能な符号構成法を提案し,デジタル指紋符号との関連性を考察した.
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