研究概要 |
本研究の目的は, アクティブ型RFIDシステムを建物内に導入する際の基となる建物内電波伝搬環境を推定できる実用的な電波伝搬シミュレータを開発することである. この目的を達成するために, 本年度は, (1)電波伝搬計算プログラムの開発, および(2)コンクリートの透過・反射特性測定システムを開発することを目指した. (1)の電波伝搬計算プログラムの開発において, 電波伝搬シミュレータの基となる計算方法として, CIP法を選択した. CIP法は従来用いられているFDTD法と比較して位相特性が良いことが知られている. まずCIP法での導体物体に対する境界条件を求めた. この境界条件を用いて導体物体による散乱解析を行い, その結果は理論解析およびFDTD法とよく一致することを確認し, 求めた境界条件が有効であることを示した. さらにCIP法の計算の高精度化を図るため, 数値解析の一部で高次の計算過程を適用することにより, より高精度な電波伝搬解析が出来ることを示した. 次にCIP法を用いてモデル化した屋内での電波伝搬解析を行い, その結果を屋内縮小モデルを用いて行った電波伝搬実験と比較した結果, 非常に良く一致することを示した. 以上より, 2次元解析ではあるがCIP法が電波伝搬計算に有効であることを理論的および実験的観点から示した. (2)に関して, 媒質の誘電率測定法として, 円筒空間定在波を用いた手法を提案した. 電波伝搬シミュレータを開発する際には, その空間の媒質の電気定数として実際の媒質に近いものを設定する必要がある. 今年度は, 均質媒質と考えられるベークライトの電気定数を円筒空間定在波を用いて測定した結果, 参照解として利用される同軸ケーブル法の結果とほぼ同じ結果が得られた. 以上より提案した誘電率測定法が有効であることを示した.
|