研究概要 |
本年度の主要成果を以下に記す。 1.これまでに確立した不動点理論に基づく学習アルゴリズムを低ランク適応フィルタに拡張し、それによって計算量削減と性能向上が同時に達成されることを示すとともに、収束解析を行なった。この手法は、一般に最適フィルタがパラメータ数より少数の信号に基づいて決定されることに着目し、パラメータ空間の入力ベクトルを低次元空間に射影する。この拡張により、学習に必要な訓練データ数を大幅に削減できるため、周波数利用効率が格段に向上する。提案法は、共役勾配法に基づく適応アルゴリズムの拡張として位置付けられ、従来法に新たな知見を与えている。 2.二つの異なる領域(例 : 時間領域、周波数領域、空間領域など)で同時にオンライン学習することができる反復法を考案し、その収束解析を行なった。本手法は、適応射影劣勾配法で用いられるstrongly attracting非拡大写像として「ある関数に付随する射影勾配作用素」を採用することにより導かれる。「ある関数」とは、各々の領域における制約集合への平均2乗距離に基づいて定義される凸関数である。本手法により、多くの情報を同時に利用した効率的な学習が可能となり、周波数利用効率の飛躍的な向上が期待される。更に、本手法は無線通信・機械学習のみならず、動画像復元や医療(例 : IMRT, Intensity Modulated Radiation Therapy)を含めた様々な目的への応用が期待される。
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