1. 変換領域アルゴリズムや準ニュートンアルゴリズム、Proportionate適応アルゴリズム、クリロフ比例法を含む数多くの適応アルゴリズムに対して、不動点理論に基づく統一的な解析法(時変計量適応射影劣勾配法)を提案した。これまで解析が困難視されていた上記アルゴリズムに対して、「計量の小変動」という仮定のもとで厳密な収束解析を与えた。また、数値例と解析を照らし合わせることにより、「計量の変動量」と「ステップサイズ」がアルゴリズムの性能に及ぼす影響について考察を与え、その関連性を明らかにした。本成果は、機械学習や隣接分野における多数の学習アルゴリズムに対して理論的枠組みを与え、新しいアルゴリズムを構築する際の有効な指針を提供するものである。 2. Y.Censorらによって提唱された「Feasibility Splitting」という概念に基づいて、複数領域(例えば、時間・周波数・空間領域など)における制約を同時に考慮した適応学習問題を提示した。また、不動点理論に基づく「適応射影劣勾配法」において射影勾配作用素と呼ばれる非拡大写像を用いることで、当問題に対する反復解法を導出し、開写像定理を用いて提案法の厳密な収束解析を与えるとともに、提案法の有効性を数値例により検証した。本研究で示した解析は、従来の統計的アプローチとは異なり決定論的なものであるため、観測情報の統計的性質に依存しない(非定常環境も含んだ)解析になっている。本成果は、従来の適応学習パラダイムを、より柔軟に先験情報を取り扱えるよう拡張するものであり、今後の応用の広がりに大きく貢献するものと期待される。
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