研究概要 |
21年度までの成果として,複数の異なる領域(例えば時間・周波数・空間領域など)で同時に実時間学習することができる反復法(多領域オンライン学習アルゴリズム)を提案し,その収束メカニズムを解明した.22年度は,提案アルゴリズムをSIMO無線通信システムにおける多ユーザ干渉抑圧問題へ応用し,その有効性を検証した.具体的には,全てのユーザの到来方向推定値が得られている状況を想定し,そのステアリングベクトルから構成される行列を用いて線形変換を定義し,変換領域でのエネルギーに関する制約条件を付加的に導入した.これは付加情報を利用することで受信機設計における情報の欠落を補っていることになり,したがって少ない観測データから高精度な干渉抑圧を実現することができる.更に収束速度を向上させるため,並列射影に基づくオンライン学習アルゴリズムを導出した.今回取り扱った問題は複素空間で定義されるが,N次元複素空間(Nは受信アンテナ数)から2N次元実空間への全単射写像を適切に定義することにより,実空間で得られた上述の収束解析を適用できることを明らかにした.数値シミュレーションにより.以下のことを確認した. 1.全てのユーザの到来方向推定値が正確なとき,既存アルゴリズムの5%以下の観測データから高精度な干渉抑圧を実現する受信機が設計できる. 2.全てのユーザの到来方向推定値が正確でないときであっても,変換領域でのエネルギーに関する制約条件を適切に設計することで利得の損失を最小限に抑えることができる.この成果は今年9月にPoitiers(France)で開催される国際会議International Workshopon Multidimensional Systemsで発表する予定である(招待論文).
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