本年度は、外部光源を用いることなく2つの光信号の光波長を入れ替える「周波数スワッピング」の定式化・実験的検討を主に進めた。これは、信号光入力ポートに依存した光波長シフトの正負を得るというもので、干渉型光スイッチの各アームに入れ子にしたマッハツェンダー構造の各々を、位相が互いに直交した単色電気信号で駆動することにより実現される。補助金申請の段階では動作原理の説明は定性的なものに留まっていたため、実験的実証に先立って、理論モデルの構築・解析による動作原理の確立を行った。続いて、ニオブ酸リチウム基板上に作製した上述のデバイス構造を単色電気信号で駆動し、光デバイスの透過前後の連続光の光スペクトルを観測した。その結果、電気信号の周波数(10GHz)に対応した光波長のシフトが、光の入力ポートに依存した正負を伴って現れることを確認でき、ほぼ所望の動作が得られた。これらの事から、データが重畳された光信号に対する周波数スワッピングの足がかりを掴み、動作の基本原理の妥当性を理論・実験の両面から示すことに成功した。これらの成果は次年度の国際会議(CLEO/IQEC2009)への採択が決定済である。また、構成を若干変更することにより波長・送信先が同じ複数の光信号が同時に光ノードに到着した時の信号衝突回避も可能となることも見出し、上述の動作原理と合わせて、2件の関連特許出願に至っている。更に、実験条件の設定にあたって必要となったスイッチング速度やクロストーク等の干渉型光スイッチの基礎特性に関する測定も進め、動作条件の獲得は勿論、それらの知見に関しても今年度の国際会議(OFC/NFOEC2009)に2件採択が決定された。
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