研究概要 |
ネットワーク上でゲームなどの相互作用を行っているエージェントの振るまいや集団挙動を記述するために,どのプレーヤーが重要な役割を持つことを同定することは重要である.重要性の定義により,一般に中心性の問題と呼ばれる.本年度は,特に枝に方向があるネットワークにおいて,頂点の中心性を決める手法を開発し,様々なネットワークに適用した. 枝に方向がある場合,枝の根側のプレーヤーが枝の先側のプレーヤーを制御ないし支配していると見なすことができる.このとき,より強いプレーヤーを支配するプレーヤーは高い中心性を持つ.グーグルの検索エンジンに使われているページランクもそのような性質をもつ中心性指標であるが,本研究では,意見形成,集団同期,侵入等のダイナミクスにおける頂点の強さを解析的に定量化することによって,そのような中心性を考案した.ネットワーク上のダイナミクスによって意味づけられる中心性であるという意味で,アドホックな定義による中心性よりも強い基盤をもつ. 次に,開発した中心性指標を効率よく,あるいは,解析的に見通しよく計算する算法を整備した.具体的には,反復法や,行列木定理などを応用することによって,提案した中心性指標を効率よく計算できることを定式化した.また,ネットワークがコミュニティ構造と言われるようなグループ構造をもつときについて,中心性を効率よく近似する手法を開発した.そして,その結果をいくつかの実データに適用して,その有効性を確かめた,特に,電子メールの送受信によって定義される人間関係ネットワークに指標を適用し,有効な結果を得た.
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