研究概要 |
これまで関わったことのない相手と取引を行うとき,相手の評判が分かれば,非協力者に搾取されにくい.評判による間接互恵性は,新しい相手と出会う機会の多い社会(e.g.インターネット上の商取引など)における協力行動を説明することができる.特定の評判の割り当てルールのもとで,評判が集団全体に十分かつ正確に行き渡る場合に,相手の評判が良いか悪いかを区別して協力する戦略が進化ゲームにおいて安定であることが知られていた.しかし,現実の社会では,集団内に評判が完全に伝わらず,相手の評判が分からないような不確実性が存在し得る,このような不確実性がある場合に,安定して集団の協力行動を支えるような評判の割り当てルールを理論的かつ網羅的に調べ,どのようなルールが協力行動を安定にするかを明らかにした, 2つの状態をもつ投票者モデルにおいて,各個人がどちらかの状態を選考しうる場合について,その数理モデルを提案し,平均場近似と数値計算によってモデルを解析した.少数の個人が片方の状態を選好すれば,残りの多数の個人が逆の状態を選好しても,少数の個人の方の意見に全体が行き着きやすいこと,そのダイナミクスはパラメータ領域について頑健に起こることなどを明らかにした. 人間は,進化ゲームが仮定するように得点の高い他者の真似を行うだけでなく,自分の過去の行動結果に基づいた学習を行うことが示唆されている.この要素は,ネットワーク上のゲームをモデル化するときにも重要となりうる.一方,学習下では協力行動が出現しにくいことがいくつかの異なる学習を用いた先行研究によって知られている.本研究では,2人ゲームの場合について,ある学習モデルを提案,数値解析した.相互協力が起こるパラメータ領域を数値的に明らかにし,多くの場合に相互協力がゲームの繰り返しを経るうちに達成されることを示した.
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