平成20年度において、これまでの研究において用いた小型CCDカメラによる映像計測システムを発展させ、カメラ映像をネットワークを介して複数計測するシステムを構築した。これにより、キャプチャーボードの制限を受けることなく、1台のサーバによって同時に複数の映像を長期間記録することが可能となり、実験が迅速にかつ効率よく行えるようになった。このシステムを用い、生体実験モデルである孵卵初期段階での鶏胚の映像を、正常成長胚として孵卵温度38℃環境下で連続的に計測し、映像データから胚や血管網の成長や体動の有無を調べるために、それぞれの部位を分離する画像処理システムの構築を行った。このシステムでは、フィルタ処理や色解析を用いることによりそれぞれの部位をオブジェクト化することにより、部位を特定し表面積を求めることが可能となった。この表面積の時間推移より、胚および絨毛尿膜などの血管網の成長を調べることができる。初期胚の成長に関しての連続したデータはあまり報告されておらず、特に孵卵中期(7日目)以降における酸素一二酸化炭素交換器官である絨毛尿膜の成長を、同一個体で調査が可能になったことは今後の研究において重要であると考えられる。また、孵卵3日目ほどから現れる体動は、正常に成長するために必要な運動であると考えられる。この体動を調べるために、胚部位にあらかじめ用意した円画像をフィッティングさせ、その中心座標を目玉の座標として確定する。この作業を全てのフレームで行い、中心座標のX-Y平面データから体動の運動方向や軌道などを調べ、X、Y方向それぞれの時系列データより頻度、移動距離、周期を算出するプログラムの作成を行った。目玉の抽出には円画像フィットに加え、色濃度変化を4方向から調べることにより抽出精度を向上することができた。
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