昨年度までの成果として、電流制御型の一定推進力加圧システムを開発し、5GHz帯の周波数掃引型のドップラレーダシステムを開発した。本年度は、より高い繰り返し周波数での計測を行うための送受変調周波数掃引型のMIMOドップラレーダシステムを新たに開発し、加振法の検討や高空間分解能を得るための最適なアンテナ配置についての検討を進めた。 昨年度に開発したGold系列符号を用いたMIMOレーダシステムでは、プリファードペアとなるM系列符号で送受信において二重に変調することにより、MIMOレーダを構成しそのアレイを直交配置することにより3次元的な位置分解能を得ているが、M系列符号は直交符号ではないため32767個の符号長を用いても-40dB程度のダイナミックレンジしかえられない。そこで、送受変調符号の積が直交するための符号の条件を導出し、二重変調後に各アンテナの組み合わせに対応した異なる直交符号で多重化されるシステムを開発した。これにより、32767個の符号長を用いたM系列を用いたシステムと比較し、ダイナミックレンジでは25dB、ビット長(1計測にかかる時間に対応)では256倍短くすることができた。これにより、単一周波数を用いたドップラ計測において、変調信号のチップレートを500kHzとすると、7.8kHz程度の高繰り返し周波数でのアレイ計測が可能となった。本システムでは1分間の計測においてダイナミックレンジは100dBであった。 また、アンテナ配置に関しては、散乱体を球と仮定したときの厳密解を用いて、振動物体の位置、サイズ等をパラメータにした測定感度に関する検討を行いた。その結果、送受信アレイを半径2波長(12cm)の円上にそれぞれ9個交互に配置し、アレイ平面に直交させた偏波を用いた場合、Time-reversal MUSIC法を用いて、SN比10dBにおいてアレイ面より1.5cm離れた直径6mmで、75ミクロンの振動変位を有するターゲットの位置を2cm程度の分解能で推定できることが示唆された。
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