本研究課題の目的は、ヒト血管内罷機能情報分析のために簡易な光学系と実時間の分光画像計測が特徴である拡散反射分光画像計測システムを試作・開発し、皮膚表在毛細血管拡張性動態の時・空間計測を実現することである。 本年度の研究では、はじめに前年度に構築した分光反射画像計測システムに2枚の偏光板をクロスニコル配置で挿入することで、皮膚の不要な表面反射成分抑制による画質の改善を行った。 次に上腕部を50および250mmHgの圧力で5分間閉塞し、その際の分光反射画像から皮下静脈血管径の計測を行い、圧迫による血液の貯留とそれに伴う静脈の拡張とその2次元分布を定量的に評価できることを確認した。 さらに、50mmHgで圧迫した上腕を開放した直後の掌部皮膚表在毛細血管の還元血液量が単調減少するのに対し、酸化血液量の応答が、急激に低下した後に一時的に増加に転じ、その後再度減少するという三相性の変化を示すことを被験者13名に対する実験結果において確認した。加えて、この三相性変化は個人間、活動度によって異なる応答を示すことも明らかになった。これらの結果は動脈血管系と静脈血管系の応答の違いを示すものと考えられ、それぞれの応答曲線を解析することで動脈血管系と静脈血管系の血管拡張性を個別に評価できる可能性が得られた。ストレンゲージプレチスモグラフ(SPG)などの従来装置では原理的に評価が困難であるこの変化は、生理学的に意味のある興味深い結果であり、本研究課題により、新しい血管拡張性評価の可能性が得られた。
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