本研究では、実環境に存在する様々な雑音に対して頑健な音源方向推定手法の確立を目指す。平成21年度は、雑音環境下で観測された音響・空間特微量の信頼度を高精度に推定するための数理的指について詳細に検討し、汎用的な音源推定結果の信頼性推定尺度を構築した。音源方向の信頼度推定は、本研究により着想を得たものであるが、平成20年度は経験的に唯一の信頼度推定尺度を用いていた。しかし、それは拡散性雑音環境では有効であるが、指向性雑音源が存在する環境では破綻することがわかった。そこで、より汎用的に音源方向推定値の信頼度推定を実現するために、空間特徴量の高次統計量に基づく複数め信頼度推定尺度を設計し、拡散性および指向性雑音環境下でも有効な信頼度推定尺度を構築した。 音源方向推定値の信頼度は、音源からの音情報と音環境(雑音や残響)からの情報の関係を統一的に表すものと解釈できる。音源方向推定では、音環境モデルを積極的に利用し、目的音源の音響・空間情報を抽出する。そこで、本研究では、音源方向推定値の信頼度に基づいて、音環境モデルを適応的に使い分けることにより、音源推定精度の向上を目指した。具体的には、音源方向推定値が信頼できる場合には複数マイクロホンを用いたビームフォーミングにより音環境モデルを更新し、信頼できない場合には音源に関する空間情報に依存しない方式により音環境モデルを更新した。その結果、非定常な雑音環境において提案手法の有効性を確認した。 本研究の主要な成果である音源方向推定値の信頼度推定手法は、音情報に限らず、様々な情報における特徴量信頼度への発展が期待できる。
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