研究概要 |
本研究では,ピエゾアクチュエータを用いた超精密デジタルパルスステージによりナノ精度機械環境を実現し,さらに回折格子の光回折現象を利用したセンシングを組み合わせることにより,高い繰り返し精度を持つ位置決め装置の開発を行ってきた。本年度における研究では,引き続き位置決め装置の改良を行うとともにこの原理を応用した精密位置センサの開発を目的としてシステムの構築及び基礎データの収集,研究調査を行った。 位置決め装置の改良において,得られた基礎データをもとに透過型0次回折モデル,透過型近接回折モデル,反射型回折モデルの3種類の計算モデルを提案した。それぞれのモデルの実験装置を製作し,装置の設計及びその妥当性を検証した。透過型0次回折モデルは,センサの設置が容易である。透過型近接回折モデルは,光源部と受光部を含めたセンサ全体を小型化が可能であるが,センサの設置精度がセンサの精度に大きく影響を与える。反射型回折モデルは,装置実装の点で有利であるが,設置精度と光強度の微弱さによるS/N比の向上が課題であることが明らかになった。また,透過型0次回折モデルにおいて,実験の検出結果から算出された検出精度は±0.6nmを得ることができ,昨年度の結果より向上させることができた。 精密位置センサにおいて,位置決め装置の透過型0次回折モデルをもとに計算モデルを提案した。モデルによるシミュレーション結果の妥当性を評価し,装置の製作,実験を行った。2つの回折格子の位相を変化させることにより,変位センサの精度が大きく変化することがわかった。この結果より,位相差を適切に選択することにより,位置センサへの応用が可能であることが明らかになった。
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