研究概要 |
本研究では拘束システムに対する状態リセット入力を用いた補償入力の生成法を提案し,サーボ系の制御へ応用することを最終的な目的としている.本研究課題の達成と関連し,平成21年度の研究では状態フィードバック型リセットを伴う線形システムの研究を引き続き発展させた.代表者が提案するこのリセットシステムは,コントローラ状態のリセットに制御対象の状態の情報を利用している点において従来のClegg IntegratorやFORE (First order reset element)等を一般化したものと考えられ,可能なリセット行列はブロック下三角構造を持つものにまで拡張される.またNesic et.alが近年導いたL2安定性のための新しいリアプノブ型アプローチの結果に基づき,代表者はLMIアプローチに基づく状態フィードバック型リセットを含む線形システムの安定性の十分条件を導いた.またこの結果に基づき,ゲインフィードバックによるL2安定化問題について研究を発展させた.これは与えられた線形時不変システムおよびリセット行列に対し,実行可能なリセット領域およびL2安定化ゲインフィードバックを求める問題である.従来の線形リセットシステムの研究では主に解析問題が議論され,状態空間における系統的なフィードバック設計の結果は,代表者が知る限り他にないものである.この結果によれば従来型のリセット行列については,前述の安定条件より連続的なリセットを生じない妥当な制御則が常に得られることが明らかになった.またリセット領域の表現行列により,線形時不変系の場合と比べ可安定条件が緩和されることが示された.これはリセット制御が線形制御では安定化不可能なセステムを安定化できる場合があることを意味している.以上の理論的な研究実績に加え,リセット制御によるサーボ制御の実験装置を作成し実験を行った。
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