研究概要 |
従来の多くの制御系設計において, ゆらぎやノイズといった不確定要素は, 制御性能を低下させる要因として制御系からできるだけ排除される存在であった. この事実とは対照的に, 本研究では, ゆらぎの発生源を制御器に積極的に取り入れることでより良い制御性能が達成可能になることを, 理論的な安定解析・時系列解析, 数値実験, さらに, 人の視覚運動制御系を模擬したロボットによる実験を通じて明らかにする. 本年度は, カメラーロボットアーム-倒立振子系をプラットホームとして利用し, 制御系のダイナミクスにゆらぎを含む場合の制御性能評価を行った. 具体的には, 数値シミュレーション実験と実機による実験の両側面から, ゆらぎが振子の安定化と時間応答性能に与える影響を明らかにした. 倒立振子系のシミュレータは, 将来の2リンク2自由度のマニピュレータの実装を見込んで汎用性を重視して設計した. 実機実験では, むだ時間がない状態で単純なPID制御にゆらぎの要素を加えた制御器を構成し, 安定解析を行った. さらに, 人の運動制御の振舞いは非常に振動的なため安定限界付近に動作点があると考えられているという事実に基づいて, シミュレータおよび実機のゲインや振子の設計パラメータを理論的な安定境界付近に設定することで, 定量的に安定領域内の動作点を見つけることができた. これは, ゆらぎが制御性能(主に, 安定性や時間応答)に与える影響を定量的に詳しく調べる次年度以降の研究につながる結果である.
|